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今年の高原は夏があったのか、というような天候でしたが、その夏も過ぎ去り、初秋を迎えたある日、小淵沢のイタリアンレストランとしてマスコミにも紹介されるなど、人気のマジョラムさんにお邪魔いたしました。2001年に開業して9年目のシーズンです。マジョラムさん一家は、奥様と、大学生の長女、高校生の次女、それに、マジョラムと同い年のラブラドールのピグちゃんという女の子、ロシアンブルーの兄弟グリとゾロという猫の男の子、小淵沢町役場で次女の方が保護した前足の不自由な雑種のしらたま君という男の子の猫ちゃんという大家族です。
小淵沢でマジョラムさんを開業する前は何をしていらしたのですか。
開業直前は、いろんな店を渡り歩いて料理の修行をしていた訳ですが、元々は金融機関──まぁ、広い意味での金融機関、なんですけども──で、働いてました。
いやぁこれは意外も意外でした。尤も、ブログなどの文章力からみて、実は相当のインテリだとは思っていましたが、料理畑とはまるで異なる畑にいらしたとは。
で、レストラン経営を目指したのはいつ頃だったのですか?
そうですね。決めたのは30代ですが、子供の頃からやりたいな〜とずっと憧れてはいましたね。料理はもう子供の頃から、好きでしたから。
へぇ!?あぁそうだったんですか!
この企画の第1回のパイ工房さん、第2回のキッチンハートランドさんもそうですが、ほんものの食品・料理をお作りになっていらっしゃる方に共通していますね。
それで、イタリア料理というものに、関心を持ち出したのは?
う〜ん、そぅ・・・元々イタリアという国そのものに、興味がありました。なにしろ日本人が戦国時代に丁髷を結っていた頃に、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロが活躍するような国ですからね。そしてもちろん料理にも関心を持っていたんで、会社を休んで行ってきましたよ。食べ歩きのついでに見物をしてきたという感じで。ただ、私の興味は美術館に飾られた作品よりも建物に施された彫刻、でした。有名な建造物はいうまでもなくそうなんですけど、それこそ何でもないそこらの建物にも、これでもかっていうくらい、装飾されているんですね。
はぁ!そういえばあちらには家の壁にもお城にも彫像やらレリーフやら、ほんと多いですものねぇ。
そうなんです。街中にあふれてるって感じでしょ?そのくせ、料理は豪快で、でもちょっと繊細な、そして素材の味を引き立てる・・・言ってみればまぁそんな国民性に引かれてといいますかね、で「心はもぅ、イタリアン!」(笑)という具合になっていました。
その頃、取引先の社長が、銀座の有名フレンチレストランのシェフとマネージャーを引き抜いてイタリアンレストランを開業したんですが、これがまた味・接客その他すべて素晴らしく、…何度通ったことでしょう。普通は居酒屋ですよね(笑)。後にまさかここで修行することになろうとは予想だにしませんでしたよ。ん〜でも今のマジョラムの味の原点は、まさにこのレストランなんですよ!
ううむ。運命的なものを感じますね…。
それでその後、たまたま関西から白馬に引っ越してイタリア料理店を開いていた人のことを、雑誌で知ったんです。そうそう、そのころはちょうど「田舎で暮らそう」みたいなことが流行りだしている時期でもあったんですけどね!…でその記事の中の人は、山深い所にログハウスを建てて、雪の中で子馬を飼って、家族で暮らしていたんですね。
で、そこに行ったんです。やぁ...別世界のような印象を抱きましたねぇ。『ああ、そうだ私も、“こういう事”をやりたかったんだな』と強い思いが募ってきまして、ですぐ、その場で「ちょっと働かせてください」と言ったんですよ。
えぇ!?
そしたら、「どうぞ」と言ってくださいました。(笑)で、しばらく後に、「(会社)辞めて来ました!働かせてください」って本当に働きに行ったんです。そこで、そこのオーナーファミリーが、木工とかね…それこそ椅子やらテーブルやらみんな手作りでやっていて家族が肩寄せ合って暮らしている...。そういう姿に、まだ若かったものですから私も、強く感銘を受けまして、そのような生活スタイルに憧れました。そこではもちろん「修行」ですから、ただ働きでしたけど、でまぁそれ以降も、本格的にもちろんあちこちで修行したんですけれども、何と言っても、白馬の体験は、まさにあるべき生活そのものといった感じで、心惹かれていきましたね…。
このお話はインタビュアーも感銘を受けました。実は、わたくしも、人間的な暮らしを求めての都会からの移住でしたから。大いに共感いたしました。
だけど、エリート会社員を辞められてお店を開くということに反対はなかったのですか?
あもぅ、ありました、ありました。妻も大反対・・・、両親も、とくに母などはねぇ、泣いて反対してました。
でも、長女は小学校4年生の時点で、すでに3回も小学校を、転校しているんです。それが自分としてはとっても辛くてね、2人の娘にもうこんな事させたくないなぁ、という思いが強くあったんです。娘達は辛いとかイジメにあったとか、決してそういう事ではなかったんですよ。でも……やっぱりねぇ。寂しかったと思いますよ。なのに「引越ししたらまたお友達が増えるからいいよ」なんてサラリと言うんです。それ聞くと...ね。。かえって、グッと胸にきましたね。
もちろん、レストラン経営は私自身の願いではあったのですが、やはりベースには、そういう家族の生活の絆を大切に暮らしたいという思いが、あったのも確かでしょうね。
ううむ。これもじーんと胸に響くお話ですね。
そういう経緯で、いよいよお店を開業する運びになるわけですが、そのお店が、ここ八ヶ岳高原の小淵沢になったというのはどういう理由からですか?たしか、それこそ白馬もあり、伊豆、軽井沢など、たくさんの候補地をお探しになられたんですよね?
ええ、ずいぶんとたくさんの場所を探し歩きました。ほんというとね、私自身はもっと山奥のほうでもよかったんです。そこにホッタテ小屋作って、ヤギがいてニワトリがいてとかね...だから蓼科の奥などもよかったですね。でも、そこへさすがに家族を引き連れてということになるとねぇ...難しいですよね。娘の学校通いのことなんかもありますし・・・。小淵沢にした最大の理由は、実は、やっぱりまぁとにかく「気候が良い」ということですよね。
そうなんですよねぇ。たしかに、みなさんそれ仰いますね。
それに自然景観が良くて、でしかも普通の生活が可能!、というような条件を満たしていたという事ですよね。本当は、ここは「神に導かれた」とでも書いて欲しいところなんですけども…。(笑)でも実際、そういう思いにさせられたとも、言えるんです。アルファー波か何か、出てるようなというか……。
それまでほんと、いろいろな場所に行っても、家族4人の意見が一致することはなかったんですよ。で、実を言うとここ小淵沢という処は、元々全く知らなかったんです。全く。茅野とか蓼科あたりを探していて、なんとなく流れでここに踏み込んだんですよね。
長野県のはずれの方に来ちゃった、あれ?もう(県境)越しちゃったかなみたいな、たまたまね。(笑)
その後も一人で何度か通っている内に、不動産関連以外にも飲食業や宿泊業、芸術家の方々など多くの人たちと知り合ったんですが、皆さんすごく親切に接してくれるんですよ。他の土地に比べ、人とのつながりが濃くなってきたんですね、いつの間にかここでは。
そこで家族を連れてきて、このマジョラムの場所に立った時、期せずして、娘たちが「お父さん、ここがいい!」と言ったんです。「ここがいい」と・・・。妻も同感でした。もちろん、私も。
この場所との出会いはそういう、それこそ何かにツゥ〜と導かれたかのように、家族皆の心を一つにしてくれました。この場所は、単に商売をやる場所という以上に、家族の絆というものを大切にした生活がしたいと願っていた私にも、一瞬に「ここだ」と決心させてくれました。
こういう運命的な出会いというものは、人間と人間にだけでなく、人間と自然、人間とや場所との間にも起こるものなんですね。ご家族皆が、かの場所に感動して立ち並ぶ光景は、何やら一幅の絵になりますね。
さて、終の棲家にする場所も決まりました。イタリアンレストランの開店です。で...マジョラムという名前は、どういった所からおつけになられたんですか?
あ、これは、ハーブの名前なんです。オレガノに似てまして…。ピザのソースに使ったり、鶏肉にも合うんですよ。でまた「魔女」っぽい語呂がいいのと(笑)、自分の姓と頭文字が同じということもあって。それとお庭で食事できるのをアピールしたくて、とまぁそんなこんなで「パスタ&ピザガーデン マジョラム」にしたんですけど、...何やかや100個以上の候補があって、もう忘れてしまいましたけど、まだパソコンの中にありますよ。(苦笑)
お店にとって、ネーミングは重要ですね。名が人を呼ぶという事がありますね。
こうして2001年にめでたく開店という運びになったわけですが、今やマジョラムさんはマスコミにも度々紹介されて名所化していますが…で、事実いろいろなメニューが美味しいと評判なのですが、その中でも、今現在一番人気のあるメニューと言うと何でしょうかしら?
えぇ。。。スパゲティだとベルデューラ、ピザならクワトロフォルマッジョでしょうか。カルボナーラとか…バーニャカウダー、ポルチーニのクリームリゾットも人気で、うぅんなかなか一つにはしぼれませんねぇ。
それだけ、どのメニューも多くのお客様に愛されているということですよね。
そうそう、マジョラムさんは特にリピーターが多いようですが、そうしてお客様が満足してくださるイタリアン料理のエッセンスというと、どのようなことがあげられますか?別な言い方をすると、どんな点がマジョラムの売りだと思いますか?
ええと。。。まず、大きな茹で釜、つまりお蕎麦屋さんのような釜で茹でます。普通のイタリアンレストランだと、一人前、二人前と(取っ手の付いた小さな四角いザルに)小分けするんですけど、それだと、せせこましく茹でるので麺がじゅうぶん茹で上がらない、大釜でのびのびと“泳がせながら”茹でたほうがよりよいアルデンテに仕上がると私は思っています。
それと、まぁオイルですよね。「秘伝のオリジナルオイル」というのが、マジョラムの一番の売りかな。
オリーブ?...オイルですか。
オリーブオイル。あのオイルはですね、お客様がいらしてから作ったのでは間に合わないので、しこしこと一日かけて作っています。
へぇぇ。・・・オイルは、継ぎ足し・継ぎ足しで作っていらっしゃるんですか?
いえいえ。ま…うなぎのタレとかだとね、そういう風にするんでしょうけども、油の場合はねぇ...傷んできてしまいますので、なくなる前に1日がかりで作るんです。よろしければあとでお見せしましょう。
と言って戴いたので、油壺の中を覗かせて戴いたのですが、ニンニクの匂いがまことに香ばしくて、何とも幸せな気分になる、またつい食欲をそそられる、じつにいい香りのするマジョラム特製オリジナルオイルでした。しかし手間のかかる作業ですね。
イタリアン料理の初心者にとって、レストラン選び、メニュー選びのコツとしてはどんな点がありますか?
そうですねぇ・・・。まず、具のないペペロンチーノのおいしい店、でしょうね。言うなればお蕎麦屋さんの盛り蕎麦と同じで、まったくごまかしがない料理ですから。
そしてピザですが、最低でも注文の都度延ばしているお店。出来合いの生地は言うに及ばず、あらかじめ延ばしておいた生地はちょっと悲しいですよね。
あと、イタリアンは、定食屋ではないので、個々に1プレートというのでなく、飲物や前菜に始まり、いろいろ注文して、みんなでわいわい取分けながら食べていただくと嬉しいです。そうしていただくと、少しずつ順番にお出しすることができます。一度に全員分の料理を提供するなんてことは、元々想定していませんからね。
なるほど、なるほど。これは、いいご助言をいただけました。大いに参考にしたいお話ですね。
一般家庭でイタリア料理を作る場合のコツというのはどうでしょう?
んん・・・やっぱりそれはガーリックの使い方でしょうね。といっても実は本場のイタリアでは、日本みたいにガーリックはたくさん使わないんですよ。でも日本人が家庭で料理を作る場合、好みで作ればいいわけで、イタリアではこうだからとか、何も本場にこだわる必要もないでしょう。で、ガーリックの使い方がポイントになりますね。あの旨みを油の中に浸透させていく、油を入れたフライパンを斜めにして最も弱火で、冷たい状態からグーっと我慢していって、よぉく観察して、気泡が出てきた、と思ったら、きつね色になるともう焦げるのが速いですから、油断していると真っ黒になっちゃいますから、消すタイミングを逃さないことですね。それとガーリックは手で潰すと一番旨みを引き出しやすいですよ。手の甲でぐいっと押しつけてね。
ほぅ!これも、目から鱗というお話ですね。皆様もぜひお試しください。
それでは、ここで、具体的な営業についてお聞きしたいことがありますので、お答えいただければと存じます。まず、メニューの中の最低料金と最高料金を教えてくださいますか?また、コース料理の場合の料金も。
最低料金はコーヒーの280円、最高料金はサーロンステーキ赤ワインソースの1980円ですね。ランチコースは2380円から、ディナーコースは2980円からです。
リゾート地としては、リーズナブルな設定ですね。
食事会などは、どの位の予算からお受けになっていますか?
飲み物を含まないで、ランチは1500円、ディナーは2500円程度からにさせていただいております。
あと、マジョラムさんは予約でいっぱいで何時行ってもなかなか入れないというお客様もおいでなのですが、予約は何日前から受付可能ですか?
受付期日は特に制限はございませんよ。場合によっては当日でも大丈夫です。(笑)ただし、繁忙期の営業時間中に、お電話いただくことは避けていただければ幸いです。忙しくて、対応できないことが多いので・・・
これで、マジョラム入店の目安が分かりました。プランも立てやすくなりましたね。
さて、お話は尽きないのですが、最後にお客様へのメッセージをお願いできますか?
そうですね、さきほども言いましたが、マジョラムの場合、麺は小分けせずに大釜で茹でるので、ということは、今3人分茹で始めたら、その後2人分だけ追加するというわけにはいかないんですよね。今茹でている3人分ができあがってから次の2人分を茹で始めるので、どうしてもオーダーから召し上がれるまで時間がかかってしまうんです。ピザも1枚1枚手延ばしで、石床窯で焼きますから、一度に大量生産はできません。その点のご理解を頂きたいのと、イタリア料理って、別にお酒に限らず、何か飲みながら、生ハムを摘んだりとかしながら、次の料理を待ち、ゆったりとした時間を食べ過ごすというのがスタイルになってますので、そうしたゆとりの時間もね、食のうちとして楽しんでいただければなぁと願っております。どうしてもお急ぎの方は、混雑時のマジョラムは避けていただければと思います。
オーナーはお客様を待たせることに大変恐縮されていらっしゃいましたが、行列ができるお店というものが度々マスコミで紹介されていますよね。
マジョラムさんのイタリア料理も、ほんものの味を追求する結果、言い換えれば、手抜きをしない料理法が、時間を必要とするわけで、そのオーナーの真摯な姿勢には脱帽です。それに、待たされた甲斐がある極上の味を賞味できますよ。
さて、インタビューはこれで了としますが、本当は、脱線したり、話が飛んだり、オフレコの部分などで、笑いがはじけるお話が随所にあったのです。
そこにマジョラムさんのお人柄の魅力が溢れていて、ぜひ紹介したいところなのですが、そこはそれ、あとはお客様が実際に混雑していない時にお店に行かれて、じかにオーナーに接して、そのダンディーな容姿とともに、忌憚のない率直で魅力的なお人柄に触れていただければと思います。極上のイタリア料理の味と共に、人間性とご家族の絆の魅力に惹かれることと存じます。